月面探査レースの日本チームHAKUTO(ハクト)を親子で応援しよう。ていうかそもそもなんでこんなことやってるの?に回答します。
2018/09/26
ただいま、Google(グーグル)がラジコンカーのレースを主催しており、10年越しのレースの真っ最中。
あの天下のGoogle主催です。
Googleが用意しているレースの賞金は、なんと総額3,000万ドル(約35億円)。1位になれば、そのうちの2,000万ドル(約23億円)がもらえます。
どんなレースなのか?
- ラジコンカーを500m走らせる。
- ラジコンカーから走らせた証拠となる高解像度の画像や動画を送信する。
そんなに難しくないような・・・。この一等賞に賞金23億円?
あ、もうひとつレースの条件を忘れてました。
- 民間のロケットにラジコンカーを乗せて打ち上げ、「月」の上に着陸させて月面を走らせる。
レースの舞台は、夜空に浮かんで輝く「月」です。つきです。MOONです。
「月でラジコンカーを走らせる」そんなレースに挑戦しようとしている日本のチームがいます。
その名は「HAKUTO」
ハクト。語源は「白兎」
月でラジコンを走らせるために、日本人のいい大人たちががんばってまっせ! 日本の技術とモノ作りを世界にアピールしてまっせ! しかも、スタッフはほぼみんなボランティアでね!
スケジュールが延びまくって、今のところロケットが飛ぶのは2017年12月28日→ 延期になって2018年初めの予定。
ひとりでも多くの人にこの挑戦を知ってもらいできれば応援してほしいなあとの思いから、いちHAKUTOファンが勝手に入れ込んで書く暑苦しいエントリー。
これは、夜空に浮かぶ月を見上げながら子どもと遠い宇宙へ思いを馳せられる、素敵なチャンスだと思う。
【2018年1月25日追記】
このレース自体、ゴールを見ることなく中止となりました。HAKUTOの追っかけをやったいちファンが、下に追記という形で総括してます。
このエントリーは過去の記録としてそのまま残しておきます。
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3分でわかる「HAKUTOって何をやるの?」
Googleのレースってなんだ?
前段で茶化して書いてしまったため、まずはレースの詳細をマジメに整理しておきます。
人類初の月面探査レース「Google Lunar XPRIZE(グーグル・ルナ・エックスプライズ)」とは?
参考 公式「Google Lunar XPRIZE」
ひとつ最初にお勉強。探査のロボットを一般的に「ローバー」と呼びます。これ。
で、ローバーをロケットに乗せて打ち上げ、月面着陸船(ランダー)で月面へ着陸。そこからローバーを降ろして月面で走らせる「月面探査レース」の概要をまとめておくと
- 一見不可能とも思える目標と賞金を設定し、技術革新を促進しよう設立されたXPRIZE財団(エックスプライズ財団)。Googleがスポンサーです。
- XPRIZE財団によって運営されている2007年9月にスタートした世界初の月面探査レース「Google Lunar XPRIZE(グーグル・ルナ・エックスプライズ)」
- 当初は2012年までの実現を目標としていたものの、何回か締め切りを延期して今は2018年3月31日を公式な期限としている。延期することでミッションに参加するチームを増やしたい考え。
- レースの主なミッションは3つある。
- ミッション1:月面に民間開発ロボット探査機を着陸させる。「民間」がポイント。国の力は借りない。
- ミッション2:月面の着陸地点からローバーで500メートル走行する。
- ミッション3:高解像度の動画や静止画データをローバー→ 着陸船 → 地球へ送信する。
- それぞれのミッションのクリア条件はXPRIZE財団から指示されていて、細かいチェックが入る。ズルはできない。
- 賞金総額は3,000万ドル(35億円)。そのうち1位に2,000万ドル(23億円)、2位に500万ドル(6億円)。本当は行ってないのでは?疑惑もある1970年代のアメリカアポロ計画で月面に残しっぱなしの機器を撮影したら400万ドル、月面で水または氷を発見したら400万ドルなどのボーナスミッションあり。
- 当初30チーム以上が参加を表明していたが、撤退が相次ぎ今のところは16チームが残っている。
- 2015年1月にGoogle Lunar XPRIZEが発表した中間賞。着陸・機動性・撮影の技術について優れた実験結果を出した5チームに対して資金援助や奨励目的で総額525万ドルの賞金が出た。その5チームの内訳は、アメリカ2チーム、ドイツ、インド、そして日本の「HAKUTO」
日本のチーム「HAKUTO」は、XPRIZE財団から中間賞をもらった堂々の優勝候補なのです。
日本チーム「HAKUTO」とは?
「Google Lunar XPRIZE」に日本から唯一参戦しているチームです。
参考 HAKUTO公式サイト
2010年から始動。後で解説するけどHAKUTOのプロジェクトリーダーを務める袴田さんが社長をやるベンチャー企業「ispace」と「東北大学宇宙ロボット研究所」、仕事を通じて培った経験やスキルを活かすボランティア「プロボノ」がチームを組んで、ロケットの調達とローバーの開発を進めています。
民間の力のみで月を目指すレースのルールのため、国の援助は受けていない。
ロケットの打ち上げ費用は、基本的に「重量換算」です。重ければ重いほど、お金がかかる。1kgあたりの輸送コスト1~2億円が相場です。
アメリカNASAの過去の探査機は900kg。今回のレースに参加するアメリカのチームのローバーでも30kg。
強化プラスチックを使用し、徹底的に世界最小サイズの軽量化を図った日本チームのローバーはたったの「4kg」。技術と努力の結晶なのです。
最初、4輪と3輪のローバー2台を月に送り込もうと開発したらしいのですが、お金がないので断念したそう。イベントに登場したボツ3輪モデル。
現在は、実際に月を走るフライトモデルを製作。
サイズは、全長58.0cm、全幅53.6cm、全高35.8cmです。で、重さは4kg。
このモデルが実際に月へ行きます。こいつはデモ機。
この最終モデルのローバー(フライトモデル)をアメリカのロケットに乗せて月へ飛ばす予定だったのですが、ロケットが飛ばなさそうと判断し2016年12月末に急遽方針変更。
同じレースに参加するインドのチーム、チームインダスの民間ロケット「PSLV」に相乗りして月へ行くことを決定。成功率95%以上のロケットです。
これってロケットとしてはものすごく素晴らしい成功率なんだけど、100回に5回くらいは失敗するってことでもある。
打ち上げ予定は、2017年12月28日です。
2017年夏にはHAKUTOのローバーはインドへ渡るそう。
月の着陸予定地点は「雨の海」と呼ばれる場所。北緯35度25分、 西経29度23分。って言われてもよくわからない。だいたいここらへん。
月は地球から見ると常に同じ面を見せて動かないものなので、月の左上あたりと覚えておけばいいかな。
インドのシェリーハリコータにある宇宙センターからロケットを打ち上げ、バンガロールってところから管制して月にいるローバーを動かすそうです。
イベント時のローバー操縦体験ではタブレットで操作しますが、本番はパソコンから操作するとのこと。
ちなみに「インドのチームのロケットに相乗りで月に降り立つ」って「同じ月面着陸船でもインドのチームのローバーが先に降りてさっさと走り出したら負けじゃん」と思い。
HAKUTOの中の人に「それじゃ最初から負けてません?」と聞いたら「インドのチームのローバーと横一列に並べてよーいドンしようと交渉した」そう。そんな紳士協定守られるといいけど。
【2017年2月22日追記】
この記事を書いた2017年1月の段階ではローバーに愛称がなかったのですが、2017年2月21日、3万7000通の公募の中からHAKUTOのローバーが「SORATO(そらと)」と名付けられました。
宙(そら)の兎(うさぎ)という意味からの、SORATOだそう。なんかあんまりピンとこないけど、ご報告申し上げます。
【追記おしまい】
素朴な疑問「なんでこんなことやってんの?」
実は我が家、すでに半年以上、HAKUTOの活動を5歳の息子と一緒に追っかけやってます。
HAKUTOの存在を知ったのは、雑誌「日経ビジネス」の2015年の記事。レースの中間賞を受賞した有望チームが日本にいる。その時は「へえ」と思っただけ。
初めてチームのメンバーの方と話したのが、2016年の夏。
東京の日本橋三越にたまたま行ったらHAKUTOのイベントをやっていて、ローバーの操縦体験を息子がやって大喜び。ここで興味を持って詳しく調べたら、えらいおもしろそうなことをやっているので追跡開始。
それからは東京都内で行われるHAKUTOのローバー操縦イベントを、息子と追っかけてます。これは新宿のauショップでやったイベントの様子。
タブレットから実験機のローバーを遠隔操作できます。子どもは大喜び。
宇宙好き、メカ好きにとっての「常識」をこちらは一切持っていないど素人。
いい機会だから勉強してみようと公式Webサイトを見ても、スポンサーの特設サイトを見ても、このGoogleのレースの開催概要だけはしつこく書いてあって、何の条件をクリアしないといけないのかはよくわかるのだけど。
「チャレンジって、なにがどうチャレンジなの?」
「なぜこんなこと苦労して一生懸命やってるの?」
動機や目的の説明が少なくて、いまいち伝わってこない。これじゃ応援のしようがない。
なんでみんながんばって月でこんなもん走らせようとしてんの? お金持ちの遊び? 何十億円も使って月までロケット飛ばしてそこから何が得られるの?
イベントの追っかけをやってるうちにすっかり顔見知りになってしまったHAKUTOの中の人へ、失礼を承知で「そもそもの最終目的は何ですか?」とアホ丸出しな質問をしたところ、「HAKUTOのプロジェクトチームリーダー袴田さんに聞くのが早い」と、あろうことか一番偉い人へ僕を丸投げしよった。
いやいやいや単に疑問に思ったことを空気読まずにズバズバ聞くのは僕の病気みたいなもので、偉い人から説明して欲しいなんてひとことも言ってないって。
この方がHAKUTOトップの袴田さんです。男前。
夢を語る感じが若く見せるのだろうか、プロフィールを見たら1979年生まれで自分と同じ世代です。
勢いとハッタリで押し切るタイプじゃなきゃこんな盛大なプロジェクトは回せないだろう、と勝手に思っていたけど正反対。しゃべりはあまりうまくないですけど(失礼!)落ち着いた技術者肌でうちに秘める想いがものすごく熱くたぎってる感じ。
こういうタイプ、周囲にあんまりいない。せっかくだから直接いろんな疑問を投げかけてみた。
袴田さん、ひとつひとつ丁寧に答えてくださってありがとうございました。
しかしいきなりだもん。もうちょっと勉強しときゃ良かった。この記事書いてたらじゃんじゃん湧いてくる疑問。例えば「ローバーの小型軽量化による悪影響はないのか?」。軽くしていいことばかりじゃないはずなんだけど。また機会があったら聞いておきます。
最後に「親子の共通の話題でHAKUTOを応援できるのって楽しいです。周囲におすすめしたい。そんなブログ記事を今度書きます」って申告をしたら、袴田さんが今度はHAKUTOのメディア広報担当の人を紹介してくれました。すみませんメディアでもなんでもないです、弱小ブログです。
せっかくなので、広報担当の人にもいろいろ聞いてきた。
袴田さん、メディア広報担当の方、おふたりから伺った「HAKUTOはなぜ月を目指すのか?」をここにまとめておきます。
- 挑戦って何に挑戦してるわけ?何がどのくらい大変なの?
- このレースに参加して結局何がしたいの?
そもそもなんでこんなことやってんの?って気になるよね。僕が代わりに答えます。
これらを知ると、HAKUTOのプロジェクトへの見方がちょっと変わる。子どもの質問にもきちんと答えられるようになる。はず。
挑戦って何に挑戦してるの?どれだけ大変なの?
「挑戦」「チャレンジ」って言ってるけど、何がどういうふうに大変でチャレンジしてるの?
細かい困難は山ほどありますが、僕らのような素人でもわかる大きな苦労ポイントは2つ。
- お金
- 技術
です。
1:お金の苦労とは?
宇宙開発、ロケットを飛ばすような行為は、通常は「国家プロジェクト」でバンバンお金を注ぎ込んでやるもの。一般市民がやるようなことではないし、やらなきゃいけないものでもない。
だから予算が潤沢にあるロシア、アメリカ、中国といった大きな国がイコール「宇宙開発の先進国」になっているのが現状。軍事目的もかなりあるのでしょうけど。
今回のHAKUTOの計画に、国からのお金は1円も投入されていません。
民間のみのスピードと技術力で技術革新を促進させるのがこのレースの主旨。民間の力だけでどこまでできるか。
50年前のNASAアポロ計画時のバカでかいロケットではなく、今は複数の小さなエンジンをソフトウェアで制御すれば宇宙に打ち上がる。そういった技術の進歩によって全体的なコストは下がっており、あのアマゾンのペゾス社長が宇宙産業に参入しているように民間のスピードをもって宇宙開発を進める動きが最近のトレンドです。
仮に「Google Lunar XPRIZE」の3つのミッションを国主体でやると、1,000億円かかるレベル。
しかし、いくら安くなったとはいえHAKUTOのローバーを乗せてロケットを月へ飛ばすだけに数十億円の費用がかかるのも現実。
1位になって賞金の23億円を仮にもらえたとしても「収支トントンかむしろマイナスですかねえ」って広報担当の方が言ってました。1位にならなければ全部持ち出しか。きっつい。
なのでお金を出してくれる企業のスポンサー集めなど、資金調達がとにかく大変とのこと。
お金がないことには何も進まないし、ロケットも飛ばせない。資金調達ができず、計画が頓挫したチームもあるそう。資金と開発スケジュール、そして「技術」。バランス良く進めないと、このミッションはクリアできないのです。
2:技術の苦労とは?
お金がない、お金がない、ってよそのうちの懐事情を暴露し続けるのも失礼な話だけど、トップ自らがそう言ってんだからしょうがない。
お金がないため、開発コストを下げる必要があります。湯水のごとくお金が使えるわけでもなし。
従来の宇宙機器の開発は高価な特注品が多かったのですが、今回は、一般の技術をどう応用して宇宙の環境に耐えられるようにするかに苦心している。
HAKUTOのローバーの車体には、宇宙向けに普段は使われない炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を採用。車輪には軽量メガネなどで使われる特殊樹脂ウルテムを使う。車輪のモーターも一般の民生品を使用したりと、自動車やスマートフォン向けの部品を組み込み、民生品の比率は全体の7割にものぼる。
そして、それらは最先端の技術を提供してくれるメガネの「Zoff」や接着剤の「セメダイン」など、スポンサーの協力ありきです。一番大口のスポンサー「au」は、レースのクリア条件である月からの高解像度の画像・動画を、着陸船経由で送信する通信技術のサポートを行っています。
「ローバーを月面で走らせる」と言うのは簡単ですが、月面はかなり過酷な環境となっています。細かく説明すると永遠に話が終わらないのでざっくりいく。
- 月の表面は昼間が100℃、夜はマイナス150℃にもなる。上下250℃の温度差。
- 月の表面は「レゴリス」と言われる細かいトゲトゲした砂のようなもので覆われている。転ばないように走るだけでも大変。しかもこのレゴリスは電気を帯びやすく、磁石にもくっつく、機械にとってやっかいもの。
- 月面には大量の放射線も降り注ぐ。地球の地上が1年で0.35ミリシーベルト、月が表面が1年で500ミリシーベルト。その差、1429倍の放射線(X線)は半導体へ確実にダメージを与える。
- ご存知、月の重力は地球の6分の1。
- あたりまえだけど空気がなくて真空。
参考 au MOON CHALLENGE「月への試練と耐久試験」
そんな条件下で、ローバーの電子機器はまともに動くのか。
繊細な電子機器を搭載したローバーを、ロケットを使って月まで運ぶのは前述の通り。ロケット打ち上げ時の振動はハンパなく、乗り心地は最悪。振動に弱い電子機器を、打ち上げ時の振動に耐えられるようにもしないといけない。
あっちも考えなくては、こっちも考えなくては。解決しなければならない問題は複雑に絡まり、もはやぐちゃぐちゃ。
しかも、それらは地上でいくらテストをしようが宇宙の環境を想定した形でしかテストできません。宇宙の実際の環境でテストはできずに本番へ挑む。宇宙で想定しうるリスクを地球上でどう減らすか?がテストのポイントとなるわけです。
ちょっとかっこいいおもちゃのラジコンみたいな見てくれに騙され、たかがローバー1台と思うなかれ。開発の大変さ、伝わりますでしょうか。
袴田さんが「『夢みたい』を現実に」と言っていたけど、ロケットを月面着陸させ、搭載してきたローバーを走らせるなんて、ほんと「夢みたいなお話」なのです。
レースに参加して何の得があるのか?
現実的な話、膨大なお金や労力を費やしてレースに参加した先に何があるのか?
HAKUTOは、袴田さんが社長のispaceという会社が主体になってプロジェクトを進めています。この会社がHAKUTOプロジェクト成功の先に見据えているのは「月の資源開発」です。
月には水があると言われています。
その水を見つけ、加工、電気分解することで水素と酸素に分ける。するとそれらはロケットの燃料になったり、月面の基地のエネルギー補給の元となる。エネルギーが確保できれば、月を拠点に宇宙で人間が活動できるようになるわけです。
Googleのレースのほうが先に始まり、レースありきで動き出したプロジェクトだけれど、HAKUTOは最終的に未来の「月の資源開発」を目的としています。
レースへ参加し、自ら月の上で探査を行うことでデータが取れて実証実験ができる。
月面にたどり着き、月面上で動いて探査する技術と能力があると証明することで国内外へ向けてアピールできる。
今回の探査の経験をもとに、今後も探査を重ねればデータと経験が積み上がる。他の惑星探査へもつながる。
将来は、日本の技術を前面に出した、月の資源開発ビジネスへの参入。そして、その先の宇宙開発へ。
人間が月に旅行できるのは20~30年後と言われており、僕らがまだ生きているうちに実現するかもしれません。
日本の高い技術力を、宇宙開発の事業化へ向けて推進する。
普通にHAKUTOを応援しているだけでは見えてこない、レース参加の目的と意図はここにあります。
参考 au × HAKUTO MOON CHALLENGE/Zoff SMART めざせ!MOON QUALITY/CEMEDINE presents HAKUTOスペシャルサイト/日経ビジネス2017年1月16号
さいごにまとめ
アピール下手のHAKUTOを親子で一緒に応援しよう
しっかし、HAKUTOは世間へのアピールがへたくそすぎる。
「オレたち、国の力を一切借りずに民間の力だけで日本を代表してこんなすげえことやろうとしてんだよ。だけどお金ないんだよ。プロジェクトはボランティア頼みだし。日本のみんな助けて。応援して」ってもっと大声で叫べばいいのに。
だからこのブログも頼まれてないのに勝手に応援してるわけで。
一般の人がHAKUTOを支援するクルー(会費1万円)やサポーター(会費千円)の仕組みもあるけど、片手間の運営でけっこうぐだぐだです。実際に入会したけどちょっといろいろ思うところがあり正直おすすめはしない。入らずとも応援はできます。
ともあれ、「みんな個人会員になって応援してください!」って情に訴えてガツガツ勧誘するくらいなら気概を感じるけど、そういう泥くさいお金集めは積極的にせずクールな雰囲気を通している組織です。
【追記】
その後、2017年2月21日~5月1日にかけてクラウドファンディングを行い、3,300万円以上を集めて目標額を達成だそう。
このクラウドファンディングにしかり1年近く活動を見てきて、技術者集団だからしょうがないのか、周囲を巻き込むために、ファンを作るために、どうやったらいいのかのポイントが微妙にズレてるマーケティングセンスに乏しいチームだと感じてます。言い過ぎか。
なんか「雑だなー」「ぬけてんなー」と定期的に呆れさせられる組織なので、ビジネスだったら絶対に取引しない。外野から眺めている分には害ないからいいけど。
ボランティア集団だからぐだぐだでもしょうがないのかもしれませんが、クラファンで大金集めてるんだからもうちょっとちゃんとしたほうがいいんじゃないの?とは思う。
【追記おしまい】
まあ批判するのは簡単なのですべて横において目を瞑っておく。
アラがあろうとなかろうと関係ない。月に行ければすべて良し。今は日本を代表して挑戦を続ける「HAKUTO」を、子どもと一緒に純粋に応援しよう。
5歳の息子「月に行けるの?すごい!」「ロケットかっこいい」「ローバーかっこいい」
僕「特に宇宙開発に興味はないが日本の技術力を世界へ見せたれ」
親子の視点にだいぶ違いはありますけど。
子どもと共通の話題で盛り上がれるいいチャンスです。特に「かっこいい」が思考の中心で基準になる男子の食いつきはハンパない。HAKUTOの動きを親子でチェックして楽しむの、おすすめです。
子どもが月や宇宙に興味を持ついい機会だし、経過を見ているだけでものごとがどう段階を踏んでゴールに向かって進んでいくのかも学べます。
地球から月まで約30日だそう。2018年1月か2月、実際に月に降り立てばマスコミが騒ぎ出す。
そんなマスコミが伝える結果だけ聞くなんておもしろくない。早めのチェックで準備の過程からワクワク感を楽しもう。
こんな楽しいイベント、子どもたちは間違いなく食いつくはず。もっと学校とか巻き込んで広報活動をやればいいのに、と思います。
ローバーにいろんな想いを乗せて
袴田さんが僕に言いました。
チャレンジをしていかないと新しい世の中にならない。HAKUTOのチャレンジによって、日本がより良い社会になれば。
日本の技術の衰退が言われる最近、あまり日本の技術はフォーカスされていない。グローバルに注目されるレースに参加することで、日本の最先端の技術をアピールしたい。
こういった前向きな言葉を袴田さんから直接聞いて、僕はハッとしました。同世代のこの人は、こんな大きなことを考えながら日々に挑んでいるのか。
高齢化社会と人口減少でこの先、日本は確実に枯れていく。それらを支えなければならない僕も周囲の人間もみんな枯れてきている。日本の衰えた姿を想像して未来を諦め、悟った気になっている僕らがこんなことを堂々と言うのはどこか気恥ずかしい。
そんな日本全体の見通しの立たない暗澹たる状況に反して、壮大な宇宙と未来への明るい夢を胸を張って語り続ける袴田さんとチームHAKUTOは素直に「かっこいい」と思う。
『夢みたい』を現実に。
ローバー、SORATOが月へ無事たどり着く日を願って。
あなたも「HAKUTOの挑戦」を親子で一緒に応援してみませんか?
【追記】Google Lunar XPRIZE終了を受けて
2018年1月25日追記。
直近の動きの振り返り
直近の出来事を時間軸で追っておきます。
- 2017年12月19日:レースの期限内2018年3月31日のロケット打ち上げに備え、HAKUTOのローバーSORATOが相乗りロケットの発射地インドへ旅立つ。チームインダスとの合同シミュレーションなどに着手。
- 2018年1月11日:HAKUTOが相乗り予定だったインドのロケットが資金難(インド側)によりGoogle Lunar XPRIZEの期限内3月31日までに飛べないと発覚。それでもHAKUTOはあらゆる可能性を模索して挑戦を続けると表明。
- 2018年1月24日:期限の3月31日までにファイナリストに残っていた対象5チームどこもゴールにたどり着けないと判断し、Google Lunar XPRIZEがレースの自体終了を発表。資金的、法的、技術的な課題のため賞金総額3,000万ドルは支払われない。
1月22日にXPRIZEの関係者とHAKUTOの袴田さんが交渉をしており、その話を受けての24日の中止発表です。
ということは、個人的にはXPRIZEの次の展開ありきでのレース中止発表と前向きに捉えてます。「新しいタイトルスポンサーをつけるか、賞金を取り下げた非営利競争としてのレースの継続も今後考えていく」とXPRIZEも公言している。
「民間の力での宇宙開発推進」という当初の目的はGoogle Lunar XPRIZEとしては達成しており、何度もレースの期限を延長してきたことからここで一旦の区切りとしたのだと思われます。
その間にHAKUTOプロジェクトの中心となっている株式会社ispaceは100億円超というスタートアップとしては国内史上最大の資金調達を行っており、HAKUTOプロジェクトで得た経験を元に月における資源開発事業を推進していくことになります。
あくまで今回のHAKUTOは、この先何十年にも渡る宇宙開発事業の最初のステップです。
報道にあるように「結局、月にはいけなかった」と悲観する必要はないのです。通過点なのだから。
HAKUTOのローバーSORATOは、月での探査活動を行う技術を兼ね備え、インドですでにスタンバイしていました。
チームインダスのロケットが飛び、月に着陸できていれば、SORATOは月面を確実に走っていた。
問題は「月に行く方法」「月に着陸する方法」を持たなかった、持てなかったことです。とはいえHAKUTOのプロジェクトは、月への輸送をアウトソースすることでローバーの開発に資源を集中する戦略なので、この判断が誤りであったとかそういう話でもありません。
今後のispaceは自前の着陸船(ランダー)開発も計画しています。
現時点で月を探査する日本の民間技術は高い水準にある。そして間違いなくダントツの優勝候補だった。
何を言いたいか。「これはHAKUTOプロジェクトの失敗ではない」ってことです。
HAKUTOは夢をあきらめない
1年以上、親子でHAKUTOの追っかけをしてきて本当に楽しい夢を見させてもらいました。
HAKUTOリーダーの袴田さんの会見、見てて泣けてきました。この人、いっつも淡々としている。大きな困難の時も、これからの未来を語るときも、いつも淡々。自分だったら感情を抑えられないであろう状況でも淡々。
最初ボソボソとしゃべってて覇気ない人だなーと思ってて実際に会っても印象はさして変わらなかったのですが、メディアに出る姿を何度も見て、今はこの人すごいなーホント真似できないなーと尊敬してます。
一番悔しい想いをしているのはHAKUTOのクルーの方々だと思います。あんなに悔しさ滲むプレスリリースを読んだことありません。
そこで、HAKUTOはこれからも挑戦をあきらめずに続けていくと表明しています。
仮にHAKUTOプロジェクトの形をしていなくても、宇宙資源開発において日本が先頭を走る日を夢見て。
「夢みたい」を現実に。
袴田さんは、HAKUTOのクルーの皆さんは、必ずや、断固たる決意で挑戦を続け新たなステージを見せてくれる。僕らはそう信じています。
【追記2】HAKUTO-R発表を受けて
2018年9月26日追記。
アメリカのスペースX社のロケットファルコン9にランダー(月着陸船)を搭載して打ち上げ
- 2020年半ば:月周回ミッション
- 2021年半ば:月着陸ミッション
を実行する史上初の民間による月周回と月着陸を目指す月面探査プログラム「HAKUTO-R」の実行が発表されました。
今度はランダーも自前で作るということで、前回、月に降り立つ術を持たなかったHAKUTOの弱点を埋めてきました。
民間月面探査実現への挑戦をReboot(再始動)のR。なんか泣けてきた。
日本の技術を世界へ。
また細々とHAKUTOの追っかけを続けてまいります。
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Comment
誰も到達できず月探査レース中止みたいですね。日本どころか世界中の民間の技術は大したことなかったようで・・・。お悔やみ申し上げます。
貴重なご意見ありがとうございました