夫婦喧嘩をこじらせない!正しいケンカのやり方
2015/01/16
「夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか」なんて、ビジネス書コーナーに腐るほどある本に自ら身を投じるベタな邦題をつけてしまい、日の目を見なかった残念な本が存在します。
原題は、「For Better:The Science of a Good Marriage」
より良い結婚生活、幸福な結婚生活を送るために、「結婚」に「科学的」な観点からアプローチをする珍しい一冊。
愛情や人間関係について最高の助言をくれるのは、セラピストやセルフヘルプの専門家ではなく、科学の世界の研究者たちなのである。
筆者いわく「その結婚が長続きするか離婚するかも、科学で予測することが可能」
豪語してるわりにはこの著者自身、「離婚」しているんですけどね。
「結婚」におけるさまざまな問題は、得てして「感覚的」「感情的」に捉えられがち。自分自身も、毎日、翻弄され続けています。
夫婦げんかをして「ああああ、もうわけわかんねえ」ってなった時に冷静になるべく、心理学者や社会学者などの専門家の言葉を借りて「結婚」を科学的見地から見直そうと、定期的にすがる読み返す本がこれ。
離婚の要因や性生活、子育てなど、様々な結婚に関する科学的データが書いてある中でも、今回は「夫婦喧嘩」、特に「正しい夫婦喧嘩のやり方」「喧嘩をこじらせないポイント」に絞って、この本から学んでみます。
Photo: IMG_5060-Editar_mini by Nicolas Fuentes
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夫婦喧嘩は結婚生活の向上に役立つ?
「幸せな結婚生活」のための秘訣が書かれている中で、よく自分が読み返すのが「夫婦喧嘩」の章です。
結婚を本当に長続きさせるには、お互いの意見の相違を理解し、短時間に有効かつ最小限のやり方で問題を解決する必要がある。
時おりけんかすることは、決定的な決裂を招くことを防いで、長い目で見れば結婚生活の向上に役立つ。
この「夫婦けんがが、実は結婚生活の役に立つ」説は、多くの研究者がみな同じ結論に達していると言います。
ただし、ふたりが「基本的なルール」を守って「正しいけんかのやり方」をしているのが大前提。「けんかをしない方法」じゃなくて、けんかはじゃんじゃんやっていいけど「けんかをする方法」がキーだと言うわけです。
男はなぜ喧嘩を避けるのか
Photo: LondonCalling by Thomas Leuthard
ちょっと横道に逸れて、「けんかの正しい方法」の前に、題名にもなっている「夫婦げんかでなぜ男は黙るのか」「男はなぜけんかを避けるのか」
理由を簡単にまとめると、ポイントはこう。
夫婦ゲンカのときに言いたいことを我慢して黙っている女性は、思ったことを口に出す人と比べて死亡率が4倍。それと対比して、男性は黙っていても死亡率うんぬんの影響は特にない。だから黙っている。
夫婦げんかの80%は妻が口火を切る。女性のほうが問題を解決しようとして感情に訴えるリスクを取りやすい。
ただ、衝突が起こると女性より男性のほうが血圧の上昇など生理的な負担が大きい。しかも「仕返し」の過程を経ないと男性は納得せず、血圧も下がらないという実験結果がある。
これらの事実から「なぜ男性が女性よりも頻繁に自分から衝突を起こさないのかを説明できる」と著者は言っています。
いや、自分も男ですが「男ってめんどくせえな!」ってのが素直な感想。
文中にて、女性は「衝突の際に、自分をなだめる生理的な能力」を持っていることが実験で証明されているのですが、男はいちいち相手に「仕返し」をしないと自分をなだめられないという傾向があるとのこと。いやはやなんとも。
しかしながら、よくよく自らの胸に手を当てて考えてみると、実は妙に腑に落ちる「事実」だったりする。
男性がまず防御的になり、それから否定的になり、そして夫婦間の不一致のストレスを回復するために仕返しする必要があると感じるという仕組みは、事態が螺旋状に急激に悪化する理由をも教えている。
そう、この男の「めんどくささ」が夫婦げんかに持ち込まれると、こじれて悪化の一途をたどるのです。
男性陣は、ちょっと自覚しておいたほうがいいですよね。
正しい夫婦喧嘩のやり方とは
さて、本題です。
正しい夫婦げんかのやり方とは?
この本の中には、ボディーランゲージなど複数の方法が書かれているのですが、僕が特に大切だと思う2つのポイントをピックアップしてみます。
ポイント1:会話の最初の3分が大事
Photo: TakeUsTo:Montevideo by Federico Racchi
最初から、厳しい言葉を投げつけたり棘のある皮肉を言ったりするカップルは、トラブルへ向かっている。
衝突の原因について注意深くやさしく取り組もうとするカップルは、お互いの関係を損なうのではなく、強めるような、前向きな話し合いができる可能性が高い。
夫婦げんかのとき、最初の三分間の対応を間違えなければ、夫婦の関係を改善する道を進める。
けんかの一部始終が重要なのではなく、重要なのは「議論の冒頭部分の3分間」だけ。
ワシントン大学の研究で、最初の3分間を見れば、夫婦が6年後に離婚しているかどうかが予測できると立証されているとのこと。
そして、冒頭の3分における「良いけんか」と「悪いけんか」の決定的な違いは、「不満」ではじめるか「批判」ではじめるかだと説いています。
「週末には子供たちのお出かけの送り迎えをしてほしいわ。私にも自分の時間が少しは必要だから」(不満)
「あなたは自分のことしか頭にないのね。子供の世話はひとりでは無理だとか、わたしにもやりたいことがあるなんて、考えたこともないんでしょ?」(皮肉っぽい批判)
「不満」と「批判」の違いはなんとなくわかりますでしょうか。
何が問題なのか。その問題を解決することがけんかの目的であって、その問題すべてを全力でぶつけて個人攻撃することが、けんかの目的ではないのです。
批判や皮肉で始まる話し合いがロクなことにならないのは、自分の経験からもうっすらとわかります。
不満と批判の違いは微妙だが、それだけに言葉の選択には注意が必要だ。
著書「結婚はなぜ成功し、なぜ失敗するのか」でゴッドマン博士は、不満は具体的かつ細かいもので、批判はより一般的で非難を含み、軽蔑は批判に侮辱が加わっているとした。
「あなたはいつも」や「あなたはけっして」という文句は不満が頭ごなしの批判に変容しているのをはっきり示している。
パートナーと口論するときには、「あなた」という言葉は極力避けるべきだ。できるだけ「私」や「私たち」を使って、詰問調で「あなた」と呼びかけるのは避けよう。
「不満」と「批判」の違いを理解し、詰問を避けるべく「言葉の選択」に気を払う。
感情的になりがちな夫婦げんかですが、最初の3分で建設的な話し合いになるかどうかが決まるという事実は、少し自分を冷静にしてくれるはずです。
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ポイント2:「喧嘩をエスカレートさせない」能力
Photo: crashcarmolly by hobvias sudoneighm
「最初の3分が大切」と同時に「夫婦げんかを手に追えないほど激化させずに収める能力」が大事だと説きます。
具体的には、
- ゆっくり静かな口調で話す。
- 相手の目を見よう。腕や脚を組んではいけない。相手が立っていれば自分も立ち、座っていれば座って、見下ろしたり見上げたりすることなく、目線を同じ高さにして話す。
- 必要ならば、休憩をして自分の考えをまとめよう。一気にまくしたててはいけない。動揺していて気分を落ち着かせる時間が必要だから、後で話したほうがいいと、はっきり相手に伝えること。
これらのアドバイスは、「確かに」と納得させられます。
また、対立をエスカレートさせないための「言葉」も具体例を挙げて解説しています。
- 明確化のフレーズ:「あなたが言いたいのは・・・」などと、相手の発言をくりかえすのは、あなたが相手の言い分に耳を傾けていることを明確にする。たとえ、あなたがその言い分に同意していないとしても。
- 威嚇的ではない言葉:「たぶん」「もしかしたら」「どうやら」「ひょっとして」といった言葉でしゃべりはじめると、相手に別の可能性について考えさせ、相手の考えに同意しないでいられる。
- 肯定:「それがあなたにとって難しいってことは、私にもわかる」「今の話はもっともだ」「この問題をこうしてふたりで解決する努力ができてうれしい」
- 自由な回答をうながす質問:「あなたの考えは?」「それならば、どうしたらいいかしら?」
ポイント1で引用した「詰問調の「あなた」を使ってはいけない」のルールが守られておらず、ちょっとひっかかりますが・・・
これらの言葉を必要に応じてスムーズに使いこなすにはちょっと練習が必要です。
ただ、この「喧嘩をエスカレートさせない方法」をいつも意識しておくと、夫婦げんかの泥沼化が避けられるのは確かです。
大切なのは、状況に注意をして、なにがなんだかわからなくなってしまうのを避けること。緊張が高まって、声がうわずり、興奮してきたら、それを鎮めるのに全力を尽くそう。
「けんかはしたくないの」というシンプルな一言が事態の悪化を抑えて、激突を避ける機会をもたらすこともある。
「けんかはしたくないんだよ」
3年前にこの本を読んでから、僕自身よく使うフレーズですが、かなり有効です。
「けんかはしたくない」と言葉に出すことで、自分自身も落ち着くことができます。今日このエントリーを読んだことで何かひとつだけ覚えて帰るのであれば、この言葉を推奨。
まとめ:幸せな結婚生活を目指すために
Photo: Juliette&Jonathan-75 by John Hope
正しい夫婦げんかの方法とは、
- 口論を始める最初の3分間の態度と口調に注意を払い
- 不満と批判の違いを見極め言葉を選び
- 穏やかな態度と効果的なフレーズで議論をエスカレートさせない。
けんかをしたがる人はいないと思いますが、夫婦間に衝突は不可避なもの。
本に書かれている科学的な研究から学ぶに、夫婦げんかの内容も頻度も問題ではない。
うまいけんかの方法を知り、身につけることで、夫婦の関係性を損なわずにお互いの意見を分かり合い、感情に訴えるのではなく冷静にパートナーとの良き関係を築くことが大切なのである。
そうありたいものです。って、書きながら「難しいわっ!そんなの」と自分でツッコんでいる。
そう簡単じゃないことはわかっています。ただ、より良い夫婦関係のために、なんとか方向性を探り探りでも、考えて、努力して、突き詰めていきたい。必要なのは、そういう常日頃の「心構え」なのでしょうね。
今回は「夫婦げんか」だけに絞って紹介してみましたが(しかも引用が科学的要素が薄い部分ばかりだけど)、「結婚」という難しいテーマに、論理的なデータを用いつつ有効なアドバイスを送るこの本は、既婚者ならかなり学ぶことが多い一冊です。
機会がありましたら、ぜひご一読を。
しかし、偉そうに本の教えをぶったところで、今朝も元気に我が家は夫婦げんか勃発。で、この本をまたパラパラと・・・。
そんな僕には、2015年の宮中行事「歌会始の儀」で15歳の少女が詠んだ歌、「本」がお題の入選作が身に染みます。
引用 日本経済新聞「歌会始の歌」
この本に全てがつまつてるわけぢやないだから私が続きを生きる
今日もがんばって「続きを生きる」とします。
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